goooodインタビューNO.16 – 中村拓志

 

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gooood Interview NO.16 introduces Nakamura Hiroshi | Hiroshi Nakamura & NAP. More: Hiroshi Nakamura on gooood.

 

Producer: Xiang Ling
Coorporate Editor: Hu Jialin 
Editor:Chen Nuojia, Yang Zihao, Wang Congyue, Lu Lu, Su Xin, Liu Mi

 

 

Interview
gooood x Hiroshi Nakamura

 

1.
中村さんの最近できた建築は森など野外にあるプロジェクトが多いようですが、敷地の選択については意識していた結果ですか?中村さんが建築の委託を受ける際に、どのような要素を大事にしていますか?

素敵な自然環境がある敷地のプロジェクトを優先したいと思っています。その敷地の魅力を活かした建築によって、人々にそれを残し続ける意識を持ってもらうことが、私の社会的使命だと考えています。最近はクライアントが、我々がこれまでに自然と建築のより良い関係をデザインしてきた作品を見てオファーしてくれることが多いので、結果として豊かな自然環境をもつ敷地のオファーが多いです。

 

2.
「恋する建築」は2007年に出版された本ですが、その中で「人と建物の新しい関係を探る」と書いてあります。10年経った2017年の今に見返せば、「人と建物の新しい関係」について新しいアイデアができましたか?

普遍的なテーマなので、まだまだ考え続けなければいけないし、進歩させていくことだと思っています。10年前と現在の違いを考えると、今はより動的な関係性を考えています。つまり人間がずっと座ってたり、ずっと立ってたりといった静的な状況の中で建築を構想するのではなく、首を振ったり、目が動かしたり、座ったり歩いたりといった様々な動きの中で、建築と人の関係を考えるようになりました。動的な関係性が反映される作品の代表例としては、リボンチャペルがあります。ふたりが階段を上る過程で、すれ違いと出会いを繰り返しながら最後はひとつになって結ばれるという動きの中で、建築の体験を膨らませています。また、狭山の森 礼拝堂では、床がわずか1センチだけ祭壇に向かって傾斜していて、椅子から立って祭壇の方に歩いて行く時にほんの少し下り勾配がついています。大地に眠る人に会いに行く気持ちや、森の中に心が引き寄せられる感覚を、動的、つまり歩く過程の中で生み出そうと考えたデザインです。

 

3.
感情を建築設計に移るのは非常に繊細な過程と思っています。建築設計の流れを教えて頂けませんか?

例えばリボンチャペルの場合、結婚するふたりは今日結ばれてひとつになる。そういう感情の高まりを、どう感じてもらえるだろうかと考えます。かっこいい形を作りたいとか、人を驚かせたいとかではなく、あくまでもその場での主人公であるふたり、そしてふたりを今まで支えてきた家族や友たちが、この体験を強烈な思いとし、感動できるか。それがゴールだと思います。なので、やはりふたりの気持ちになってみる、そしてスタッフとのミーティグではバージンロードを歩く時はどういう感覚なのか、どんな気持ちになるのかということを実際にそのふるまいをしながら、とことん突き詰めて考えました。つまり感情をデザインするには、ふるまい、行為をデザインすることから始めるのです。感情があって行動があるというのが一般的な理解ですが、行動があって、感情が生まれるということが実際にあるのです。医学でも行動療法というものがありますよね。

 

4.
先お話したリボンチャペルも確かに80㎡くらいの小さな建物ですよね。感情はsmall scaleの建築空間だけに移られることができると思いますか?大型の建築において、感情はどうやって表現されますか?

大きい空間は大きい空間でそこでしか体験できない感覚があると思います。僕は大きな空間も、小さな空間も、どちらもやりたいと思っています。ただし人の感情と建築の親密な関係においては、小ささは大切なことだと思います。ぱっと手を伸ばしたら触れられる。このくらいの距離感で、そこに触れ合いがあるということがとても大事なことだと思います。誰かにふれることを繰り返せば、いつの間にかその人に感情移入するようになるのと同じです。しかし、それは大きな空間であってもできるのではないか。小さな空間を集積して、大きな空間を作ることができます。だから僕は、ただ大きくて、拠り所がなく、落ち着かなくて、疎外感が生まれる空間よりは、親密さのある大空間を設計したいと思っています。

 

5.
中村さんの作品に、材料の表現が非常に斬新で面白いと思っています。例えば、東急プラザの万華鏡のようなエントランスチューブや広島の住宅におけるホウケイ酸ガラスなど。材料について、どのような工夫をされていますか?材料のポテンシャルを開発する経験もありますか?

建築は人を包むものだと考えています。なので、素材は身体との関係や触り心地などの細部から、あるいは自然現象との対話まで、とても大切にしています。特にガラスは屈折によって色々な光や虹を作り、時間毎に全く異なる表情を見せてくれます。(事務所のパッチワーク窓は)これまでのプロジェクトで使ったガラスのサンプルで作りました。午後3時くらいになるとこの床に色々な光が現れます。そのようなことを計算しながら設計しますが、いつも想像を超えたことが起こることが、楽しい。これらのガラスは既製品ではなく、メーカーさんと話しながら共同開発したものです。

現代建築は工業製品をカタログの中から選んで組み合わせるという作り方が多くなりました。僕は基本的にはその流れは否定しないのですが、やはり人を感動させるにはその場所に適した、その人のためだけに作った素材というものは大切だと思っています。

 

6.
Ribbon Chapelのコンセプトは非常にロマンチックと思っており、そして類のない特殊な構造を通して建築のコンセプトを完璧に実現しました。私たちはこの建築の設計過程に非常に興味深いです。特に、意匠と構造はどうやってコラボしていますか?

リボンシャペルの場合は螺旋を構造にしています。実際にそんなことが可能であるか確信がないままに、でもこんな建築ができたら面白いよねという気持ちで模型を作っていきました。模型が自立したので、何とかなるのではないかと思い、以前から懇意にしていたARUPの柴田さん相談しました。柴田さんは、「できますよ」とすぐ言ってくれました。柴田さんは螺旋同士を4箇所だけ結び合わせれば固くなると示してくれました。一本の螺旋だと左右に揺れたり上下に振動して自立しませんが、2本の螺旋を結び合わせれば固くなり、またフープ効果で外に広がりません。上がっていく螺旋と下がっていく螺旋をXの形で結ぶので、ちょうどみたいな役割を果たして水平力が吸収できるという話をしてくれました。形にきちんと構造的な意味を発見して、それを実際にストラクチャとして実現してくれました。もうちょっとここの膨らみを絞ってくださいとか、こっちは構造的に強いのでもうすごし広げでも大丈夫ですとか、やり取りはありましたが、基本的な考え方は当初から変化していません。巻き方を変えてみたり、幅や位置などを調整しながらまさにコレボレーションで形になったと思います。

構造の方に入って頂くタイミングは場合によりますが、意匠が先にあり、その後構造をはめるというは、良いものが出来ないことが多いように思います。先の説明のように、意匠と構造が行き来しないといけなくて、かなり早い段階で構造の人に相談をしながら進めていくプロジェクトが多いです。やはり同時に考えていくのが一番大切だと思います。

 

7.
中村さんの建築は日本本土とは限らず、世界的にも高い評価がされています。近年、海外事業が高まっていると聞きました。日本のクライアントと比べて海外のクライアントの違いは何ですか?面白い体験はありますか?

むしろ僕が面白いと思うのは逆です。世界中に同士というか、同じ志を持っている人達がいることを発見するのが楽しいです。文化も育った環境も気候も自然も異なる人たちの中に、現代社会に対してどこか違うなという思いと理想がある。その理想がピタッと一致する瞬間が日本にいる以上に海外で結構あります。日本だと経済原理や色々な枠組みの中で折り合いをつけて進めることもありますが、海外から僕らに思い切ってオファーしてくれる人達はそういうことから自由で理想を追求したいという思いがすごく強いと感じます。強いからこそわざわざ遠くまでオファーをくれるのだと思います。

今すごく楽しんでいるのは台湾のプロジェクトです。自然と人間の関係を再構築するようなリゾートホテルと体験教室が合体したようなプロジェクトです。もう何度も互いに敷地を行き来して、沢山語り合いながら設計しています。彼らの持続的な暮らしを作っていきたいという思いに共感しています。今の時代だからこそ、そういうものを多くの人が求めているのだと肌で感じています。

 

8.
一番挑戦したいプロジェクトは何ですか?その理由を教えて頂ければと思っています。

美術館がやりたいです。小さな美術館は過去に事例がありますが、絵が主役でありながら、単に見るだけではなく、その絵やあるいは庭とか空間を見ながら自分自身について考えられる空間を作りたいです。また、禅寺などの祈りの場を設計したいですね。謙虚な気持ちになれたり、理想について考えられたりする場、狭山の礼拝堂や休憩所のような静かに物事について考えられる場をこれからも設計していきたいです。

 

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